心中さえ頭をよぎって
栃木県に住む田上真和さん(53歳・仮名)は後悔している。一昨年、70代の母親を介護するため、長年勤めたメーカーを退職し実家に戻った。
「母が『老人ホームには入りたくない』と言うのを聞いて、可哀想になってしまって。私は独身で身軽だし、地元なんだから再就職も何とかなるだろう、と思っていました」
失業保険を受給しながら在宅介護を始め、並行して就職活動にも励んだものの、全く受からない。仕方なくコンビニのアルバイトに応募したが、50代の体力で介護と両立できるはずもなかった。
「やがて貯金が底をつき、生活費も母の年金に頼らざるを得なくなりました。介護サービスの知識もなく、他人に頼るのは良くないと思って介護を続けていたので、疲労が溜まって眠れなくなった。気がつくと『一緒に死ねば楽になる』という思いが脳裏に浮かんでいました」

田上さんは鬱病と診断された。医師や地域の民生委員の助けを借りて、なんとか昨年末、母親を特別養護老人ホームに入居させることができた。