ヒントは『現代思想入門』にあり
3については若干の説明が必要だろう。
今年3月に現代新書から出版した『現代思想入門』、これがシビれるぐらいに超絶「おもしろくて、ためになる」本だった(自分のところから出しているので、野暮に聞こえるかもしれませんが、本当にそう思ったのだから仕方ない)。実際に10万部を超えるベストセラーにもなった。
私個人の意見だが、この本の最大の魅力の一つは、「今という時代を理解するためのたくさんのツールが、とてもわかりやすい形で示されている」という点にある。
たとえばドゥルーズについて描いた章の中で、
「世界は無数の多種多様なシーソーである」という記述を目にしたとき、私はビビビビと身体が震えるような気持ちになった。
そうだよな、たしかにこの世界って、会社でも家庭でも路上でも、あらゆる物事がシーソーのように絶妙なバランスをとってつりあってるよな、と自分事として納得できたような気がしたのである。
大袈裟に言えば、「今という時代、今という世界を理解するためのカギ」を手に入れたような気がしたし、これまで自分の人生とは縁のないように思われた思想が、著者である千葉雅也さんの分かりやすい言葉によって、一気に身近になった気がした。
本書に出てくる「二項対立で物事をとらえない」(デリダ)も、「権力は『下』からやってくる」(フーコー)も同様である(興味をもった方はぜひご一読を。凄い本です)。
この、
「今の世界を理解するカギを手に入れられる感」
「難しい思想が、自分事として感じられるようになる感」
こそが、我々が目指すべき教養書の王道ではないかと考えた。
3の「今の時代にこそ読む意義がある」というのは、それを私たちなりに要約したものだ。