2020年度の文部科学省の調査によれば、全国の小・中学生のうちで「長期欠席者」は約29万人。「長期欠席」とは、文部科学省によると年度内に30日以上登校していないことを意味するという。
ではそういう状況でどのように「学ぶ」ことができるのか。それを教えてくれるのが、教育ジャーナリストのおおたとしまささんの最新刊『不登校でも学べる 学校に行きたくないと言えたとき』(集英社新書)だ。
これは、フリースクールから不登校専門塾、不登校特例校、教育支援センター、通信制高校、公立校や私立校などを徹底取材、実例やデータも掲載し、令和の今の「不登校」に関する情報をまとめた一冊となっている。
不登校に対峙したとき、大人はどう考えればいいのかというだけではなく、「教育とは何か」「学びとは何か」を感じさせる本書。FRaUwebでは一部抜粋の上再編集したものを短期連載する。第2回の今回、前編では、不登校状態からの「学び直し」を支援する塾の代表が語る、立ち上げからの様々な失敗と、そこから得た10代の子どもたちをフリーズさせてしまう「大人がやってはいけないこと」についてお伝えする。
未来から逆算させる指導は響かない
東京・飯田橋駅から徒歩約10分の閑静な住宅街。
路地に面したガラス張りの空間は一見、美容院かカフェかのよう。中にはラグやソファやクッションがあり、またキャンプ用品もところどころに配されていて、子ども部屋のような温かさ、あるいは秘密基地のようなわくわく感があります。言われなければ“塾”には見えません。

実際、やっていることも一般的な塾とはだいぶ違います。
“教室”中央のテーブルでは、高校三年生が、オンラインで指導を受けています。生徒は塾にいるのに、講師は画面の向こうにいるようです。もうひとり、高校二年生がオンラインでつながっており、一対二の指導です。ネット上に散見される要領を得ない文章を、読み手に伝わりやすい文章に書き換える作業を通して、国語力を高める狙いの“授業”だそうです。
ラグに置かれたローテーブルでは、講師がノートパソコン越しに生徒とおしゃべりをしています。教科学習ではなさそうです。むしろ生徒の話を講師が深くうなずきながら聞いている。でも、これも“授業”だそうです。
勉強が嫌いだったり、学校が苦手だったり、不登校状態だったりする子どもたちの「学び治し」を支援する学習塾「ビーンズ」を訪ねました。