2022.09.02

78歳妻が青ざめた…「夫の認知症」が原因で直面した「思わぬ銀行トラブル」

財産凍結のリスクとは

親が認知症を発症して、預貯金が引き出せない…自宅が売却できない…。認知症により財産が「凍結」(=動かせなくなる)し、家族が途方に暮れるケースが急増しています。これまで蓄えてきた老後資金が使えなくなってしまっては、高齢となった親や夫(妻)の生活に深刻な影響が出る可能性もあります。

認知症を発症すると、「判断能力」というものが徐々に失われていきます。判断能力とは、自分がこれから行おうとしている行為にどのようなメリット・デメリットがあるのかを理解する能力をいいます。「意思能力」と呼ぶこともありますが、同じような意味だと考えて差し支えありません。この判断能力の有無が、財産が凍結するかどうかの命運を握ることになります。

<【前編】子供たちも青ざめる…「親の認知症」が原因で起こる「思わぬ金銭トラブル」>に引き続き、その具体的なケースを解説します。

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 判断能力があるか・ないかは誰がどのように決めるのか

ここで多くの人が疑問に思うのは、「判断能力の有無」は一体誰がどのように決めるのか、ということです。

結論から申し上げると、これは法律上明確に決まっているわけではありません。判断能力の「判定テスト」のようなものを受けて一定の数値を上回ったら「判断能力あり」、下回ったら「判断能力なし」ということには、残念ながらなっていないのです。

そのため、実際の現場では、ケースごとに、様々な事情を考慮しながら、総合的に判断せざるを得ないことになります。私のような専門家としても、判断能力があるかどうかの判断は非常に悩ましいところなのです。裁判所の判例でも「意思能力の有無は,問題となる個々の法律行為ごとにその難易,重大性なども考慮して,行為の結果を正しく認識できていたかどうかということを中心に判断」されるべきであるとされていま。要するに、一律に判断能力の有無は決定できないので、ケースバイケースで判断していく他ないということをいっています。

「誰が」決めるかについては明確に法律で定まっているわけではありませんが、現実には「あるかないか」を誰かが判断して契約などを進めていかなくてはなりません。実際の現場ではどのように対応しているのでしょうか。

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