「恐怖」と「洗脳」。ジョナサン店長が部下を追い詰めた手口とは?

「ジョナサン」パワハラ傷害事件③
ファミレス大手「ジョナサン」のとある店舗で起きた、元店長によるパワハラ傷害事件。ネット上では被害者の対応を疑問視する声も見られましたが、当時被害者は「恐怖と洗脳の精神状態にあった」といいます。
労働問題に取り組む「NPO法人POSSE」理事で、この事件の被害者支援を行った坂倉昇平さん(『大人のいじめ』著者)が、恐怖で被害者の口を封じる「経営服従型いじめ」の恐ろしさを解説します。

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なぜ、被害者は、そのとき「通報」できなかったのか?

ファミレス業界最大手すかいらーくグループの「ジョナサン」店内で、2020年9月から2022年4月まで起きていたパワハラ事件。今年7月末、骨折などの負傷2件について、三田労働基準監督署は被害者のAさんに対する労災を認定した。

1件目は、2021年8月の事件だ。酒類の販売自粛期間中、アルバイトが注文用タブレットの設定変更を忘れて、客がお酒を注文してしまい、取り下げをお願いすることになった。店長はAさんの責任であるとして、ネクタイを引っ張って控え室に連れ込み、壁に押さえつけたAさんの右あばらを拳で殴った。診断は、右肋骨の骨折だった。

2件目の被害は2021年10月に起きた。宅配の端末の設定ミスをしたアルバイトをAさんが指導したところ、指導方法が悪いとして、店長が狭い冷蔵室でAさんの左太腿を蹴った。Aさんは倒れて腰をぶつけ、棚に肩を強打した。両肩、左太もも、腰の打撲傷と診断された。

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この二つの労災認定が報道されると、インターネット上には「なぜ、警察に通報しなかったのか」などと、Aさんの心境を無視した書き込みが少なからず見受けられた。

筆者は、Aさんを支援する労働組合「総合サポートユニオン」の執行委員として、この事件を担当し、パワハラの実態についても詳細なヒアリングを行った。上記の被害2件はあくまで病院で治療を受けたものであり、Aさんが受けた暴力や暴言のごく一部に過ぎない。

また、パワハラ被害者がどのような心理に追い込まれるかについても、理解されていないものと思われる。拙著『大人のいじめ』(講談社現代新書)では、過酷な労働環境の下で被害者の口を封じるようなハラスメントを「経営服従型いじめ」と定義している。実際、Aさんは自身を振り返って、「恐怖と洗脳の精神状態にあった」と語っている。まさに「経営服従型」の典型だと言えよう。

今回は、パワハラ被害を受け続けたAさんの内面の変化に焦点を当ててみたい。

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