かいしさんは日本育ちの中国人。ペルーに留学し、ドミニカ共和国での駐在生活を経て、北京で生活。その様子を漫画にしたインスタグラム@kaixi_j)が人気を集め、フォロワーは7.1万人。そんなかいしさんは、昨年美大受験に挑戦し現在は日本に住む「美大生」としての顔も持つ。FRaUwebでの連載『かいしさんの日々』で、美大生になるまでの壮絶だった美大受験の準備期間について振り返っていただく短期連載をスタートする。

◇以下、かいしさんによる寄稿をお届けします。

コンプレックスまみれだった人生

2歳で日本に来て9歳で中国に帰国し、理系に進み、中国の大学でスペイン語を学び、南米を旅した。卒業後は電力会社で国際営業と中西通訳をし、ドミニカ共和国で駐在員をした。そしてその全てをやめて、26歳の春、わたしは日本で美大生になった。

そんな経歴を人に知られるたび、大体「すごいね」と言われるが、全然誇れるほどカッコいい歴史ではなかった。むしろコンプレックスまみれで、ずっと自信がなかったから、随分と人生の遠回りをして来てしまっただけなのである。

美大受験漫画「ブルーピリオド」を読んで

東京の天王洲で開催されている美大受験漫画『ブルーピリオド』の展覧会に、先月行って来た。漫画の世界にそのまま滑り込んでしまったような気分になる空間演出、そして作中に実際登場した数々の絵画や胸に刻まれるセリフの一つ一つが印象的で、幻想的だった。さらに制作裏話や作者の山口つばささんの学生時代の作品などなど、ここでは列挙しきれないくらい、とても見応えのある展示だった。

何年か前、友達が「最高に面白くてアツい美大受験漫画があるよ」と言いながら薦めてくれたのがこの漫画『ブルーピリオド』だ。

『ブルーピリオド』1巻/山口つばさ(講談社)
 

ヤンキーで優等生な主人公・矢虎が高校三年生で美術に目覚め、日本の美大の最高峰・東京藝術大学を目指す物語である(現在は合格し、入学後のストーリーが描かれている)。

美大を舞台にした漫画はこれまでいくつか読んで来たが、ここまでリアルに美大受験や、在学中の製作の過程や心境について描かれたストーリーは初めてだった。主人公の矢虎と経歴は違えど、この漫画を始めて読んだ当時、同じく美大を目指していた私には、強く感情を揺さぶられた場面がたくさんあった。

矢虎の物語が学部受験の物語だとすると、私の受験物語はまたかなり違って、大学院の受験物語になる。美大の院ってどんな試験があるのか、ゼロからどうやってみんなが学部でやってきた事を補うのか、自分の強みをどう使うのか、また、また、美大の院って何をするところなのか……。

これまでの事を振り返りつつ、『ブルーピリオド』に描かれたストーリーとはまた違う、けれども同じように過酷だった私の美大受験ストーリーを記録してみたいと思う。

漫画/かいし