寿命を数百歳まで延ばす確実な方法「35歳以下、子作り禁止」!?

効果が出るのは数千年後だけど…

人類の寿命はどこまで延ばせるか?

もし実行できれば、人類の寿命を確実に延ばせる方法がある。

ある年齢、たとえば35歳になるまでは、子供を作ることを禁止するのである。「20歳になるまではアルコールを飲んではいけません」みたいな感じで「35歳になるまでは子供を作ってはいけません」という法律を作ればよいのだ。そして、それを何百年か続けたら、今度は子供を作ってもよい年齢を40歳に引き上げるのだ。

そういうことを繰り返していけば、みるみるうちに(といっても数千年はかかるだろうが)私たちの寿命は数百歳に達するに違いない。

これは、実行されることはない、という意味では半分冗談だけれど、実際に効果がある、という意味では半分本気である。

私たちは、いくつかの重大なことを、気にも留めないで生きている。そのうちの1つは、私たちの直接の祖先には、若くして死んだ人が一人もいなかったということだ。

これは、考えてみれば当たり前で、もしあなたの父親が幼くして亡くなったら、あなたは生まれてこなかったはずだ。それは、あなたの母親にも、祖父母にも、曾祖父母にも当てはまる。あなたの直系の祖先は、全員が大人になるまで死ななかったのだ。

【写真】若くして死ななかったのであなたがいる両親、祖父母、曽祖父母……。若くして死ななかったので、あなたがいる photo by gettyimages

遺伝子を残せる年齢がポイント

私たちの一生は受精卵から始まる。受精卵というたった1つの細胞が、細胞分裂をしながら成長して、ついには生殖可能な大人になる。ここでは、生殖可能になる年齢を(切りがよいので仮に)20歳としよう。すると、この20歳という年齢が、進化にとって重要な数字になる。

遺伝子のなかには、突然変異を起こして致死遺伝子になり、個体を死に追いやるものがある。こういう遺伝子は自然淘汰によって除かれていく傾向があるけれど、その自然淘汰の強さは遺伝子ごとにさまざまである。

たとえば、10代のときに効果を発揮して、個体を死に追いやる致死遺伝子があったとしよう。こういう遺伝子は、自然淘汰によって100パーセント除かれてしまう。生殖年齢に達する前に亡くなれば、遺伝子を子孫に伝えることはできないからだ。

いっぽう、50代になってから効果を発揮する致死遺伝子は、自然淘汰の力ではなかなか除くことができない。致死遺伝子が効果を発揮するまえに、子供に伝わってしまうからだ。

【図】10代で発現する致死遺伝子と50代で発現する致死遺伝子10代で発現する致死遺伝子と50代で発現する致死遺伝子

つまり、20歳より前に効果を発揮する致死遺伝子に対しては、自然淘汰が強力に働くけれど、20歳を境に、それより後に効果を発揮する致死遺伝子に対しては、自然淘汰の力はだんだん弱まっていくのである。

もちろん、これは単純化した話である。10代のときに影響を及ぼす致死遺伝子でも、致死率が100パーセントでなければ、ある程度は子孫に伝わってしまう。

また、私たちは、両親から遺伝子を受け継ぐので、ほぼ同じ遺伝子を2つずつ持っている。すると、その片方が突然変異を起こして致死遺伝子になっていても、もう一方は致死遺伝子ではないかもしれない。もし、致死遺伝子でないほうが顕性で表現型に現れ、致死遺伝子のほうは潜性で表現型に現れなければ、致死遺伝子を持っていても10代で死ぬことはなく、致死遺伝子を子孫に伝えてしまう可能性がある。

考え出せばいろいろなケースがあるけれど、影響が出る年齢が高い致死遺伝子ほど、除かれにくい傾向があることは間違いない。つまり、少なくとも寿命の一部は、遺伝子に影響されるのだ。ということは、少なくとも寿命の一部は、進化によって作られたのだ。

この考えを支持する事実を2つほど紹介しよう。1つは、寿命に影響する遺伝子が存在すること、もう1つは、環境(外因による死亡率)によって寿命が影響されることだ。

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