地球は「キノコ」に操られている!? 生き物も天気も…衝撃の事実が分かってきた
「キノコ」の魅惑の世界「キノコ」は食材として人気があるだけでなく、小さくてかわいらしい森のマスコットとして人をひきつける不思議な魅力を持った存在です。
実は、そんなキノコがとんでもないパワーを秘めた生物であることが、さまざまな研究から明らかになってきました。周囲の生き物を巧みに操ったり、森の栄養循環を作り出したり…。小さなキノコが私たちの足元で繰り広げる壮大な生命の営みは、研究者が「地球はキノコに支えられている。“マッシュルームプラネット”といえるかもしれない」と言うほど。
さらに最新の研究で、「キノコが“雨”を降らせているかもしれない」という可能性も明らかになってきました。地球を陰から支配しているともいうべき「キノコ」の魅惑の世界を深掘りします。(NHK「サイエンスZERO」取材班)

キノコって何者? その正体に迫る
森の中に生えているキノコを見て、植物の仲間だと思っている人もいるかもしれません。しかしキノコは「真菌」と呼ばれるグループに属する、カビなどと同じ菌類です。進化的に見れば、むしろ動物に近い生き物と言えます。
現在世界で知られているキノコはおよそ2万種とされていますが、まだ発見されていなかったり、名前がつけられていなかったりする種も含めると、軽く10万種を超えると言われています。また地球上に存在する植物(30万種)と同じくらい多様なグループであると考える研究者もいます。
長年キノコの生息調査や種の同定を行ってきた国立科学博物館研究主幹の保坂健太郎さんが、ふだん目にすることのないキノコの“本体”を見せてくれました。森の地面を覆う落ち葉をめくってみると、マット状に広がっている白い物体、これこそがキノコの本体の“菌糸”です。

キノコは地中や倒木などに菌糸を張り巡らせて、周囲から栄養を得て成長します。では私たちがキノコだと思っている傘の形をしたアレは一体何でしょうか?
キノコの菌糸は伸びていった先で、適合する遺伝子型を持つ同じ種の菌糸と結びつきます。結びついた後に成長した菌糸が集まって作る「子実体」(しじつたい)こそが、私たちがキノコだと思っているもの。この子実体はキノコの種ともいえる「胞子」を作る、繁殖のために欠かせない器官です。
キノコの傘の裏に光を当てて見てみると、微細な胞子が大量に放出されているのが分かります。雨粒の力を利用したり、動物が触れるなどの衝撃を利用したり、胞子を飛散させる方法は種によってさまざま。こうした戦略のおかげで、キノコは地球全体へ分布を拡大しているといいます。

「落ち葉があるとか草が茂っているとか、何らかの植物があるところはどこでも間違いなく菌糸を見ることができます。一方でそういう植物さえも少ないような、砂漠とか、南極にいるキノコも知られていますから、地球上どこにでもいるというのは間違いないと思います」(保坂さん)