私たちのふだんの行動軸をベースに、未来を変えるアクションを集めました。毎日の暮らしの中でできることから新たな世界での体験まで、できそうなこと、やりたいことから探してみましょう。今回は、「住む」アクションの一例をご紹介します。

 

古民家を丁寧に解体し、建材を再利用して作った家。

解体の危機にあった明治初期の建物を、1枚の古写真を手がかりに復元した〈港の庵〉。

北海道函館市の西部地区に設計事務所を構える富樫雅行さん。伝統的建築物群保存地区に指定されるこの地域には、古き良き時代の建物が残るものの、活用されず空き家となっているのが課題だった。

常盤坂の家の2階にある、切り妻天井が印象的な寝室。光を取り込む窓は、出窓の幅広の鴨居を裏にして、窓台として再利用。ベッドも古材で組んだもの。

街並みを後世へ伝えるため、富樫さんは独立を機に常盤坂で見つけた昭和9年築、260万円の物件を取得し、自宅兼事務所とすることに。当初はリノベーションの予算300万、半年で終える計画だったが、100万の追加融資を受け、2年半かけて作り上げた。

1階の事務所は未完成のまま引っ越し、住みながら改修していったという。

「予算が少ないため、できるだけ自力で作業しましたが、基礎の補強コンクリートスラブの打設や、外壁の塗装、電気配線、水回りの配管など、自分だけでできないところは職人さんに依頼しました」

旧函館ドック外国人住宅をリノベーションした〈カフェ プランタール〉は、オーガニックな菜園と一体となった建物。

建材や部材は大切にほぐし、それらを再利用。壁紙を1枚ずつ剥がし、洗った壁の板を天井板に。畳の下にあった荒材の杉板は、ヤスリをかけて木目を浮き上がらせ、フローリングとした。解体で出た釘は伸ばして床や天井板を張るのに使った。

〈カフェ プランタール〉は、基礎や耐震の補強をしながら、当時の面影を残して仕上げている。居間や食堂だった部分の天井は、より開放感を得るために吹き抜けとした。

「建築家だからDIYできると思われがちですが、電動ノコギリを初めて触るほど、工事については素人でした」と、富樫さん。自分の手を動かしたからこそ、愛着が湧いたという。建築家によるハーフセルフビルドの建物は、今日も常盤坂の景観を見守っている。