お金さえあれば「豊かで幸せな人生」と言えるだろうか。もちろん、生きていく上で、衣食住を確保しなければならないし、そのお金は大切だ。しかしお金さえあればいいとはいえるのだろうか。

そんなことを考えさせてくれる映画が、荻上直子監督・脚本による『川っぺりムコリッタ』(9月16日公開)である。貧しさと孤独の中で生きてきた主人公・山田を演じた松山ケンイチさんに、「豊かさとは、貧しさとは」をお聞きするインタビュー。前編「松山ケンイチが考える“豊かさ”「負の感情をトマト畑が吸い取ってくれるんです」」では、土に触れ、畑仕事をして豊かに暮らす松山さんの姿が浮かび上がった。後編では、豊かさと合わせて貧しさについても語ってくれた。

映画の中でもムロツヨシさん演じる島田がトマトとキュウリを畑で育てている。松山さんは撮影のときに自家製トマトジュースを差し入れしたとか (c) 2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会
 

子どもには早く自立してほしい

――映画『川っぺりムコリッタ』で松山さん演じる山田は、幼い頃に両親が離婚。母親に引き取られたあと、その母も高校生だった彼を捨て家を出てしまいます。「どうせこの両親から生まれた自分なんて」と人生を諦めている人間を演じながら、松山さんは何を思ったのでしょうか。

ほとんどの子どもは、親の価値観と学校の教育を通して世界を見ています。その限られた視野から得た情報や認識がデフォルトになって、人格が形成されていく。子どもは子どもでそんな親を見て、“親ガチャ”とか言っているのでしょう?(笑)だったら早く離れたらいいのにな、と思いますね。

僕自身は16歳で家を出て芸能の仕事を始めましたが、それくらいで自立するのもいいと思うんですよ。もちろん親を納得させられるだけの計画性や強い意志がないと難しいでしょうけど、少なくとも僕は、自分の子には早くそうなってほしいと思っています。

撮影/大坪尚人

そもそも僕は日頃から、「安心して住める世の中ではない以上、自分だっていつどうなるかわからない」と思っていて。これは別にコロナがどうだとか、世界の情勢がとか、政治がどうとか、そういうことではありません。普通に生きていてもいつ大地震が起こるかわからないし、もしかしたら交通事故にだって遭うかもしれないじゃないですか。

だからこそ子どもたちには、今のうちに教えられることを教えておきたい。なので今は、できるだけ彼らのために時間を割くようにしています。もしも社会に対する知識が何もない状態で僕たち親がいなくなっちゃったら、本当に怖いので。

(c)2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会