日本の豪雨の7割は“大気の川”の影響だった!

気象「極端現象」研究の最前線から

この夏も日本では豪雨による気象災害が起こりました。また、今年はすでに台風4号や8号が上陸し、最近も11号によって大雨がもたらされています。1時間の雨量が50ミリを超える豪雨、最高気温が35℃を超える日(猛暑日)、このような気象のことを「極端現象」と呼びます。

この極端現象を引き起こすものが何かを探る研究を行っているのが、JAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)地球環境部門の大気海洋相互作用研究センターです。気象災害が激甚化・頻発化している可能性も指摘されているなか、同センターの米山邦夫センター長は、近年、「大気の川」と呼ばれる現象が注目されており、豪雨の発生には大気の川が深く関わっているのではないかと話します。

そこで、この大気の川という未知の現象について研究している同センターの趙寧(チョウ・ネイ)研究員に話を聞きました。

【写真】趙寧研究員趙寧研究員 (撮影:JAMSTEC)

8月の東北地方豪雨にも大気の川があらわれている

8月9日に、秋田県と岩手県を中心に東北地方で記録的な大雨が降りました。

下の図1を見てください。これは8月9日21時の日本列島付近の水蒸気の量をあらわしたものです。朝鮮半島から東北地方にかけて、緑色で示された帯状のエリアが細長く伸びているのが見えます。この緑色の帯は、とくに水蒸気を多く含んだ大気があることを示していて、これがまさに「大気の川」なんです。

【写真】趙研究員図1:8月9日21時の水蒸気量の鉛直分布 (趙研究員 提供)

図1は、水蒸気の量に応じて色分けしてあります。鉛直方向に含まれる大気中の水蒸気を集めて液体の水にしたときの量を示しています。たとえば明るい緑は50ミリですから、地表から大気の一番上までに含まれる水蒸気を水にしてコップに入れたら、高さが50ミリになるということです。

──大気の川、実はこれまで聞いたことのない言葉だったのですが、どのようなものなんでしょうか?

まず、地上には川があり、その川は水を運びますね。大気の川は、大量の水蒸気を含んだ大気が、まるで川のように流れているものなんです。大量の水蒸気を運ぶため、大気の川は大雨をもたらすこともあります。

8月9日も、あらわれた大気の川によって大量の水蒸気が東北地方に流れこみ、それが大雨をもたらしたのだといえます。

大気の川は数千キロにおよぶ地球規模の現象

──上空にも「川」が流れているなんて思ってもいませんでした。

川といっても、運んでいるのは目に見えない水蒸気ですから、空を見ても実際に見えるわけではありません。また、地上の川とはスケールもだいぶ異なります。大気の川は、幅数百キロメートル、長さ数千キロメートルにもなる大規模な現象なんです。

この動画を見てもらうとわかりやすいと思います。

赤道から南北に伸びる大気の川(趙研究員 提供)
【写真(動画キャプチャ)】赤道から南北に伸びる大気の川赤道から南北に伸びる大気の川 動画より2021年1月から3ヵ月ごとにキャプチャ(趙研究員 提供)

これは大気中の水蒸気量が日々どのように変化するかを示した動画です。色の濃いところが水蒸気を多く含む大気を示しています。これを見ると、赤道付近から東西方向に細長い大量の水蒸気の流れが、何本も出ては消えているのが見えます。これが地球規模で見た大気の川の流れなんです。

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