2022.09.13

欧米が「アトランティス実在」説に傾いた、
ある歴史的大発見とは?

神話と事実を結びつけた政治家で作家のドネリー

地震と大洪水に見舞われ、一昼夜にして海中に消えたと言われる「アトランティス大陸」。太平洋上にかつて存在したと噂される「ムー大陸」。
多くの謎に包まれ、いまだ実在すら証明されていない、「失われた大陸」が何年にもわたり語り継がれてきたのはなぜだろうか?
1882年に出版された『アトランティス――大洪水以前の世界』。
米国の政治家・作家のドネリーは、「アトランティスは大西洋に実在し、大西洋東西の文明はアトランティスによってもたらされた」と主張した……。
西洋古代史・西洋神話研究者である庄子大亮氏が、いまだ解明されていない謎について考察する!
(※本稿は庄子大亮『アトランティス=ムーの系譜学〈失われた大陸〉が映す近代日本』を一部再編集の上、紹介しています)

アメリカ人作家ドネリーの半生

知識人層を介して継承されていたアトランティス伝説が欧米において人口に膾炙[かいしゃ]し、それまでに増して実在を想定させるようになっていく画期が、19世紀後半に訪れる。

その要因といえるのは、アメリカの政治家・作家イグネイシャス・ドネリー(1831~1901年)の著書『アトランティス──大洪水以前の世界』(1882年)が、多くの読者を得たことである。
ドネリーは、アトランティスがかつて大西洋に実在し、そこから東西に文明がもたらされたとの議論を展開した。

まずは、ドネリーの来歴から見ていこう。
彼はアイルランド移民の息子として1831年に米国フィラデルフィアで生まれ、ハイスクール卒業後に当地の弁護士事務所で書記として働いた。
当時の多くのアイリッシュと同じく、民主党に入党。結婚してまもなくペンシルヴェニア州議会選挙に出馬するも落選すると、新天地を求めミネソタ州に移住し(1857年)、不動産業を営んだが、恐慌で破産してしまう。

そこで政界を再び志し、今度は共和党に入党する。
ドネリーは州知事の信頼を得て、1859年に副知事に任命された。その後、下院議員に当選して三期にわたり連邦議会議員生活を送っている。
しかし四期目の選挙で落選した彼は、著作執筆に多くの時間を割くようになる。かねてより知識欲が旺盛だったようで、ドネリーは読書によって特に歴史についての豊かな知識を培っていたのだ。

ドネリーは、「アトランティスは大西洋に実在し、大西洋東西の文明はアトランティスによってもたらされた」との主張を展開する。
この本はよく売れ、刊行から8年で20刷を超えた。

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