2022.09.13

失われた大陸が「ムー」と名づけられた理由とオチが面白すぎる!

占星術の本を誤訳した結末
地震と大洪水に見舞われ、一日にして海中に消えたと言われる「アトランティス大陸」。太平洋上にかつて存在したと噂される「ムー大陸」。
多くの謎に包まれ、実在すら証明されていない、「失われた大陸」が語り継がれてきたのはなぜか? そして、なぜこれほどまでに私たちの心をつかむのか?
1968年に邦訳され、日本でも話題となった『失われたムー大陸』(大陸書房)。
著者のチャーチワードは、人類と文明の発生地はムー大陸であると語った。しかし、「ムー」という呼び名を用いたのは彼が最初ではなかった……!
西洋古代史・西洋神話研究者である庄子大亮氏が、いまだ解明されていない謎を考察する。(※本稿は庄子大亮『アトランティス=ムーの系譜学〈失われた大陸〉が映す近代日本』を一部再編集の上、紹介しています)

インドで目にした粘土板から

英軍大佐を自称した米国の作家ジェームズ・チャーチワード(1851~1936年)が、その著作『失われたムー大陸』(1926、31年)のなかで、インドで目にしたという粘土板文書をはじめとする古代の伝承をもとに、存在を主張したのが「ムー大陸」である。

彼によるとムーは太平洋上にあって、世界の諸文明の起源である「ムー帝国」がそこに繁栄していた。またアトランティスもムーの植民地だったという。
ムー大陸はアトランティスと同じように1万2000年ほど前、大災害によって海中に没したとされる。

まず、発信源たるジェームズ・チャーチワードの来歴から確認しておく。といっても著書での叙述は信憑性に欠け、人物像は不確かである。
ジェームズの曽孫だというジャック・チャーチワードが米国のフロリダに居住しており、ムー大陸についての情報発信を行っていたので、それも参照しつつまとめる。

ジェームズは英国(イングランド南西部デヴォンシャー)生まれで、セイロン(スリランカ)を経て米国に移住、当初は鉄鋼技術者として働いた。
のち起業し、特殊な鉄鋼の特許を得て、ニューヨークに新しい会社を設立し成功を収めていたようだが、1910年代には特許をめぐる訴訟に巻き込まれるなど、次第に業界での勢いを失ってしまったらしい。

ちなみに、著述活動にも興味があったのか趣味が高じたのか、1894年に『セント・ローレンスのサウザンド諸島での釣り』、1898年に『メイン州北東部の大物釣りガイド』という本を執筆している。

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