「ヘビ女」にもかけがえのない人生があったという過酷な展開

優秀な刑事だった兄・朝陽(毎熊克哉)と常に比較され、「普通」「平凡」である自分に劣等感を抱いてきた馬淵悠日(仲野太賀)。そんな彼の弱さや謙虚さを「特別」だとみなし、その裏に渦巻く暗い感情にも寄り添ってくれた摘木星砂(松岡茉優)。日本テレビ系で放送中のドラマ『初恋の悪魔』では、そんな2人が惹かれ合う様子が描かれてきた。

やがて、「ヘビ女」と呼ばれる別人格の存在(ここでは仮に星砂Bとする)が判明し、第4話で星砂は「ヘビ女こそ本当の私で、消えてほしいと思われているのはこっちの私かもしれない」と怯える(こちらを星砂Aとする)。そんな彼女を、馬淵は「僕があなたを知っています。僕が知っている限り、あなたはいなくなりません」と受け止める。立ちはだかる障壁を前に、2人の関係はより一層強固になったかのように見えた。

 

しかし、第6話で事態は急展開。東京で鹿浜鈴之介(林遣都)と知り合った星砂Bは彼に惹かれ、2人は急接近してしまうのだ。そして星砂Aが危惧した通り、星砂Bにも彼女なりのかけがえのない時間や、大切な人間関係があったことが明かされる。星砂Bにとっては星砂Aこそが疎ましい存在だったという、ここまで星砂Aに肩入れして観てきた視聴者にとってもつらい事実が突きつけられるわけだ。

星砂Bは、家出した自分を保護してくれた淡野リサ(満島ひかり)との10年前の共同生活や、指名手配されていたリサを追う朝陽の銃弾に倒れた3年前の事件を、つい昨日の出来事のように語る。断続的にしか覚醒できず、飛び飛びの記憶しか持たない彼女にとっては、現在も過去も存在しない。10年前も3年前も、今あったことに等しいのだ。