家族は“社会”の単位であり、多くの問題を内包している。喫緊の課題は児童虐待の対応だ。その最新データは厚生労働省が2021年に発表した、児童相談所による児童虐待相談対応件数だ。2020年度は20万5029件で、2019年度より1万1249件(5.8%)増え、過去最多を更新。中でも多いのは暴力ではなく言葉や態度による、心理的虐待だという。グラフを見ていると相談数は激増しており、対応の遅れや、見逃し、職員不足などが問題になってくる。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「子供を虐待する行動の背景に、浮気があることが多いです。恋愛のためのお金を捻出するために経済虐待を加え、不安とイライラを弱い子供にぶつけるケースに何度も遭遇しました」語る。彼女は浮気調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。今回山村さんのもとに相談に来た由美さん(38歳・仮名)は、夫のモラルハラスメントに苦しんでいた。しかしなぜ山村さんのところに来たのだろうか。この連載は、調査だけでなく、調査後の依頼者のケアまで行う山村氏が見た、現代家族の肖像でもある。
私立探偵、夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリングを持女性探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。
リッツ横浜探偵社:https://ritztantei.com/
目の下に真っ黒なクマが…
今回の相談者は、専業主婦の由美さん(38歳)。結婚10年になる夫(48歳)との間に、6歳の息子と8歳の娘がいます。心労からかかなり痩せており、目の下には真っ黒なクマができていました。夫のへの日ごろの不満と恨みが蓄積している様子が見て取れます。カウンセリングの最初に、夫の人物像を伺ったのですが、いかにひどいかを滔々と語っていました。
「主人は公立小学校の先生で学年主任を担当しています。出世や権力への欲求が強いのに、人望はないし、昇格試験のための勉強と根回しができないから、主幹にも教頭にもなれないまま。モノを見れば餓鬼のように貪る。この前の土曜日、学校から帰って来る子供たちのために作っておいたチャーハンを、鍋ごと食べちゃったんです。あとは、ブランドなども大好きで、フリマアプリでボロボロになったブランドの財布やバッグを買いあさる。ホントに俗物なんです」

ここまで夫を悪しざまに罵るのは、夫が妻の話を日常的に一切聞かないというケースが多いです。そして、いくら話しても由美さんの夫批判は止まりません。
締めくくりに「主人はそれなのに子供たちにはいい先生として人気があるみたいなんですよ。子供は未熟ですから、すぐに騙されるんでしょうね。見た目も最悪で、ブヨブヨの体をしており、いつも汗臭い。最低な人間なのです」と言っていました。
写真を見せていただくと、由美さんが言うほど見た目が悪いということもありません。こざっぱりとしたヘアスタイルと銀縁メガネ、白いポロシャツがいかにも公立小学校の先生という雰囲気ですが、ポロシャツの胸の部分に不自然なほど大きいブランドエンブレムの刺繍がありました。