2022.09.07

「パクリサービス」だったTikTokは、なぜ中国初の世界で使われるアプリになれたのか?

Twitter傘下の短尺動画サービスのVineは2017年にサービス終了し、先行して欧米や日本でも若年層に人気を博していたミュージカリー(Musical.ly)がいたのに気付けば追い抜きミュージカリーを買収してしまったのが中国のバイトダンスが展開するTikTokである。

TikTokの元になった中国のショート動画アプリ・ドウイン(抖音)は、ミュージカリーのパクリサービスだった(もっとも、ミュージカリー自体がフランスのMindieのパクリから始まったのだが)が、しかしドウインはどうしてテンセントなどが支配する中国のネット業界でなぜ潰されたり吸収されたりせずに急成長し、ドウインの海外版サービスTikTokはなぜFAANGに潰されたり買われたりせず各国で成功を収めることができたのか。

中国のモバイルインターネットを専門とするジャーナリストのマシュー・ブレナンが書いた『なぜ、TikTokは世界一になれたのか?』(かんき出版)の内容を紹介しながら考えてみよう。

PHOTO by iStock
 

ドウインの中国での勝ち方 レコメンド、人材獲得、適切なポジショニングの変更

すべてはバイトダンスの創業者チャン・イーミンが、YouTubeが登録したチャンネルからの視聴よりもアルゴリズムによるレコメンドでよく視聴されていることに気付いたことに始まる。ライトなエンタメ分野では能動的な「検索」や「チャンネル登録/フォロー」よりも「レコメンド」での需要が大きい、と。

この気づきは中国のモバイルインターネット業界の中では早いもので、先行するジャイアントであるBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)はほとんど注意を払っていなかった。

だがレコメンドの精度は、早く・大量にデータを獲得した側が圧倒的に有利になる。後発はこのことと、投稿者と視聴者からなるユーザーコミュニティが育たないと良い動画が投稿されないというCGM(ユーザー投稿型メディア)につきものの問題にぶち当たり、出遅れることになる。

バイトダンスはドウイン以前からニュースアプリ「今日頭条(ジンリートウティアオ)」を成功させており、トウティアオでもショート動画が人気になっていた。

イーミンはニュースアプリ時代からレコメンドエンジンに注力し、バイドゥなどから人材を引き抜いた。そしてドウイン以外にも2種類の動画サービスを同時にスタートさせ、トウティアオも含めたすべてのサービスでユーザーのデータを吸い上げて精度の高いレコメンド機能を実装していた。

ドウインはひとつひとつの動画が短く、ユーザーが気に入らない動画は次々にスワイプしていくことから、AIが使い手の好みを学習するのに適していた。また、短尺で常に動画が流れているため広告動画を混ぜても離反するユーザーが少なかった。こうした理由から、同時期に始めた3つのサービスのなかでもっともユーザー数も収益も好調に伸ばすことができた。

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