2022.09.14
# ビジネス

なぜ「アメリカの投資ファンド」が「日本のマッチングアプリ会社」を買ったのか?M&Aが活発なワケ

8月10日、マッチングアプリ「Omiai」を運営するネットマーケティングが、米国の投資ファンド、ベインキャピタルによるTOB(株式公開買付)に賛同する意向を発表した。
マッチングアプリ業界は、じつはM&Aが活発な領域である。なぜ同業界がM&A激戦区となったのか?そして今回のM&Aの思惑とはーー。株式会社M&Aクラウド代表取締役の及川厚博氏が解説する。

マッチングアプリ業界はじつは「M&A激戦区」

最初に、今回のM&A案件の概要を紹介します。

■案件概要
買い手:BCPE Bronze Cayman, L.P.(ベインキャピタルが保有・運営)
売り手(対象会社):株式会社ネットマーケティング
発表日:2022/8/10
スキーム:株式公開買付(TOB)

■TOBの概要
取得予定数:1,331万5,192株、88.24%(828万5,800株、54.91%を下限)
価格:普通株式900円、新株予約権1円
期間:2022年8月12日~9月26日

ベインキャピタルによるマッチングアプリ運営会社のM&Aは、3月に発表された「with」の運営会社に続き2件目です。主に恋愛の相手を探すための「with」と、その名の通り、真剣な交際相手を求めるユーザーを対象にした「Omiai」。ベインキャピタルは今後も両者を並立させ、得られたマーケティングや機能開発のノウハウを共有することで、双方の企業価値向上につなげる狙いのようです。

 

マッチングアプリ業界は、下の表にまとめた通り、これまでも主要プレイヤーのM&Aを経験してきました。会員数1位の「Pairs」はすでに2015年、同業界のグローバルトップである米国のMatch Groupにジョイン。会員数2位はサイバーエージェントグループの「タップル」ですが、今回、3位の「Omiai」と4位の「with」が同系列になると、合計会員数では「タップル」に迫ると見られます。

日本発の主なマッチングアプリ(M&Aクラウド調べ)
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海外資本によるM&Aも、今回のネットマーケティングへのTOBで業界3件目。海外からこれだけ注目されている領域は、他にあまりないと言えるでしょう。金額面でも、「with」の運営会社であるイグニスの買付額は総額約500億円とも言われており、日本のスタートアップM&A史に残る規模となっています。

なぜマッチングアプリ業界で、活発にM&Aが起こるのでしょうか。一つには、多額の資本がなくても事業を開始できるため、スタートアップが手がけやすく、他業種からも参入しやすいことがあります。プレイヤーの数が増えれば当然、パイの取り合いも起こりやすくなります。

ビジネスモデル上、会員数の伸びが収益に直結し、キャッシュフローが読みやすい点も、買い手にとっての魅力になります。また、ネットワーク効果が高い、つまり会員数が多いほどサービスとしての価値が高まることからも、一気に会員数を拡大できるM&Aは有効な手段と言えます。

ネットワーク効果が高いということは、会員数の規模が相対的に下がってくれば、それが即、ユーザー体験に影響を及ぼし、ますますシェアが落ち込む悪循環に陥りやすい面も持っています。これもまた、運営会社をM&Aへと向かわせるファクターです。

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