さまざまなデータから浮かび上がってくるのは、小さな仕事に対して確かな意義を感じながら前向きに働く人々の姿である。
人生100年時代と言われて久しいなか、定年後のキャリアに対して世間ではどのように受け止められているだろうか。
話題のベストセラー『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』では、定年後の就業者の事例から「定年後のキャリア」の実態を明らかにしている。
ここでは64歳、年収400万円、契約社員の山村幸次さんの事例を掘り下げる。
最初から出世は期待していなかった
組織内での出世に関しては、当初から期待はしていなかった。それには、新卒採用が主流だった時代に、中途採用として入庁したことも関係していた。
「私が入った頃っていうのは地方自治体も保守的だったんです。『途中から来たやつはそんなに偉くなれないよ』って言ってる人が同じ大学卒の同僚にいて。酒席で『あんまり力んだってしょうがないから、いくらがんばったところでそんな上には行けねえんだから』とか言ってましたね。正直、当時は確かにそういうところもあったんだと思います」
山村さん自身、過去の例から考えても幹部職員にまでなることはないだろうと考えていた。ただ、その仕事ぶりが周囲からも認められる形で、50代では課長補佐として組織において重要な役割を任されるようになる。
「出世に関しては最初に言われたのもあるし、当然よそ者で入ってるわけですから。こんな駄目になった会社から受け入れてもらえたし、市には感謝してますし。そういうことは関係なく仕事は気持ちよくできればいいって感じですね。だから、別に後からそういうのがそれなりに付いてくればいいかなっていう感覚でずっとやってました」