前編『「小2娘に家事全般と妹の保育園のお迎えを丸投げ」し、自分たちは毎晩飲み歩く養父と母の末路』では実の両親の離婚や、母の再婚相手となった養父との生活を見てきた。再婚後、母親と養父は稼ぎのほとんどをパチンコと飲み代に費やし、出光さんは妹の面倒から家事までこなさねばならない状態に。中学生になった出光さんは、高校に進学したら養父と母に勝手に奨学金を借りられるだけでなく、アルバイト代さえ搾り取られることを確信。養父に殺意を抱くが、殺すことは断念し、実父のもとへ行くことを決意した。
後編では、その後の出光さんの人生を追うとともに、「子どもを親の所有物」化してしまう親の、子どものその後の人生に与える影響についても考えてみたい。
実の父親との暮らし
実父の家に着くと、恋人がいた父親は、「おまえがあっちで色々大変だったのはわかるから、お父さんは同棲せんし、再婚は絶対せん!」と言ってくれた。
高校受験は公立しか許されなかったが、無事合格。「避妊は大事だぞ。コンドームいるか?」と言っていたにもかかわらず、出光さんが入学して半年ほど経つ頃、父親は恋人を妊娠させ、再婚に。
「このとき親に対する尊敬や感謝が完全に消えました。養母との生活は凄まじいものでしたが、飲食店を営み、毎晩帰宅が0時を超える父は役に立ちません。そればかりか、『俺は中立だから』と言い放ち、私をたしなめることはあれど、養母は咎めもせず。仲裁や娘のために戦うことなどは、結局一度もしてくれませんでした」
養母との生活の一部を以下に挙げる。
・出光さんからのおはよう・おやすみ・行ってらっしゃい・行ってきます等の挨拶をされても、初日から無視。もしくは「ん」だけ。
・初めて家に遊びに来た出光さんの友人に向かって、『この子の服ダサない?』と、出光さんの服を指差し、延々と出光さんの悪口。友人は、「あの女はない。私はもうあんたの家には行かん」と同情。
・出光さんが養母に歩み寄ろうと、「突然母娘になって、お互い言いたいことを言いにくいと思うので、交換ノートをしませんか?」と提案。すると養母は、「口で言えば」と一蹴。
・出光さんが、「生まれてくる妹のためにも、私も『お母さん』と呼んでいいですか?」と言えば、「綺麗事ね」と拒否。
・養母に、「同じ時間に食べないなら晩ご飯作らない」と言われたため、「作ってくれてたら自分で温めるし食器も洗うよ」と出光さんが答えると、養母は、「なら作らない」。それを出光さんが父親に話すと、「俺の店で食え」と言ってくれたが、父親の店は酔っ払いが多く、父親が「俺の娘、胸大きいんだぞ」と常連客に吹聴していたため、セクハラされることが少なくなく、足が遠のく。
・妊娠、出産、育児のため、養母はリビングでTVを見ていることが多い。出光さんの自室はリビングダイニングを通らないと行けない。養母が起きている時間に帰ると、必ずと言っていいほど人格否定攻撃をされるため、帰宅できなくなる。
・そのくせ養母は、「私は何もひどいことをしていないのに、あの子は私にひどいことばかりする!」「あの子にいいところなんて1つもない!」と父や養母の叔父に愚痴り、その度に出光さんは、2人から注意を受ける。

こうした嫌がらせや攻撃を顔を合わせる度にしてきたため、徐々に出光さんは精神的に追い詰められていった。
「養母が晩ご飯を作ってくれていた頃は、『美味しいよ』や『ありがとう』を欠かさず言っていましたし、母との生活がどんなだったかを話した上で、『自分で作らない御飯って時点でとても嬉しい』ときちんと伝えていました。養父もしんどかったですが、精神的には養母が本当に無理でした。少なくとも養父は、『家族になろう!』という気持ちが強く感じられましたが、養母にはなく、希望も頑張りも全て砕かれました。私の実の両親や養父は、攻撃してきても人格否定まではしないので、慣れてない分キツかったのもあると思います」
お金も居場所もない
養母が食事を作ってくれないことを父親に抗議すると、平日は昼食代として500円くれるようになった。しかし、小遣いは無しのうえ、被服代、文具代も出してくれないため、アルバイトで賄うしかない。学校が休みの日は、食費は全部自分で出すか、父親の店に行くかしか選択肢がなかった。
仕方なくアルバイトを増やすが、家では養母によってお茶すら飲ませてもらえないため、バイト代はほぼ自分の食費で消えた。さらに高校に入学してからというもの、父親からは「奨学金を借りろ」コールがしつこく続く。無視していた出光さんだが、高校2年の5月頃に担任に呼ばれ、「高1の2期以降の学費が未払いだから、明後日までに全部払わないと、修学旅行に行けないぞ」と言われる。
すぐに父親に詰め寄ると、「バレたか」と笑う。「この人をアテにしたらダメだ」と判断した出光さんは、高校卒業後、すぐに一人暮らししようと考え、必死に貯めてきたバイト代を、未払いだった授業料や修学旅行代に充てた。