「高3の6割」は本を読まないが、「4割」は1日30分本を読む…このことをどう捉えるか?
全国学校図書館協議会と毎日新聞社が毎年行う学校読書調査では、不読率(5月1か月間に読んだ本が0冊と回答した小中高生の割合)が1990年代までは上昇して「子どもの本離れ」が加速していたが、2000年代以降はV字回復して直近の2021年調査では小学校4~6年生が5.5%、中学1~3年生が10.1%と小中学生は過去半世紀で見ると最高レベルで本を読むようになっている。
……のだが、東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所によるパネル調査データ(「子どもの生活と学びに関する親子調査 Wave1~4,2015-2019」)から、学校読書調査では見えてこなかった児童・生徒の読書行動の意外な実態が見えてきた。
分析をもとに「小・中・高校生の学校外の読書時間についての横断的・縦断的分析」という論文を書いた、言語学習を専門とする教育心理学者の猪原敬介・北里大学一般教育部講師に訊いた。
「学校の外」では本を読まない子たちの発見
――今回のパネル調査の特徴は、「冊数」ではなく何分読んだかという「時間」によって読書活動を測定したことと、学校読書調査とは異なり「学校の外」で行われる読書に限定して質問したことだそうですね。こちらでは、小学校1年生の段階で不読率が15.8%、小学校6年生では29.4%と学校読書調査と比べるとかなり高く出ています。多くの小学校では正規の授業のカリキュラムに「図書」の時間があったり、「朝の読書」が実施されていたりしますが、そういう「学校でする読書」以外はしていない子が実は少なくないということですよね。
猪原 おっしゃるとおり、小中学校で活字離れを低く抑えている要因は学校の働きかけによるものが大きいのだろうと思われます。ただし、「やっぱり子どもたちは本離れしていた」と一足飛びに解釈するのは正確ではなく、学校読書調査よりは今回のパネル調査で高く不読率が出ていますが、それでも全体として見れば、本を学校外でも読む児童・生徒の割合は比較的高い水準にあると言えるのではないかと。
――これまで読書推進界隈では、学校読書調査を元に小→中、中→高への学校段階が上がるタイミングで不読率が大きく上昇するため、移行期に読書習慣を途切れさせないことが重要だと言われてきました。ところがパネル調査によれば、学校段階が変わらなくても学年が上がるごとにほぼ線形に不読率は上昇しています。
猪原 はい。学年が上がるにつれて不読率も上がり、それにプラスして学校段階が上がるごとの上昇もあるようにデータからは読めます。僕もここまできれいに小1から高3まできれいに階段状に上昇していくとは思っていませんでした。

――学校段階が上がることによる不読率上昇は「生活環境の変化」が理由だとよく語られてきましたが、単純に学年が上がると不読が増える、となると要因としてどんなことが考えられますか。
猪原 複合要因だと思います。単純に学年が上がるほどに部活や勉強にかける時間は増える傾向にあり、塾や習い事、遊びやネットなど他の活動の選択肢が増え、かつ読書に割ける時間は圧迫されていくことが多いのだと思います。
また、小さいころは「本を読むと親が褒めてくれる」という外発的な動機づけが働いていたものが、保護者の側も読書しても褒めてくれなくなって「勉強をがんばりなさい」に評価対象が切り替わっていく、といった理由も考えられます。