【新型コロナ】変異のしくみと今後の進化――将来は弱毒化するのか?

感染症の病原体 プロファイル3(後)

巧妙で狡猾な生態を持つ病原微生物(病原体)たち。「敵に勝つには、敵を知ることから」ーーシリーズ【感染症の病原体 プロファイル】では、そんな病原体たちを、『最小にして人類最大の宿敵 病原体の世界』を執筆された微生物学者の旦部幸博さんと北川善紀さんの解説でご紹介します。

前回に引き続き、コロナウイルスについて解説します。いよいよ病原性の高い、重症呼吸器症候群コロナウイルスについて見てみます。

強毒型コロナウイルスは突如出現した!

21世紀に入ると、従来の風邪コロナウイルスに加えて、重症型のコロナウイルス感染症(SARS、MERS、COVID-19)の原因となる新型ウイルスが相次いで出現しました。

SARSコロナウイルス(SARS-CoV)

SARSコロナウイルス(SARS-CoV)は、2002年11月に中国広東省広州市で発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルスとして翌2003年に分離されました。

ベータコロナウイルス属のSARS関連ウイルスという種に分類され、現在流行しているSARS-CoV-2とは、同一種の中の異なるウイルス株同士という関係です。ヒトからヒトへと容易に水平伝播し、世界各地に感染が拡がりましたが、翌年7月までに封じ込めが成功して終息しました。29ヵ国で8096名が感染、そのうち774名が亡くなっています(致死率9.5%)。日本での感染者はありませんでした。

なお、流行終息後も、中国国内では市中感染や研究施設での感染事故が数件発生しています。中国に生息するキクガシラコウモリから非常によく似たコロナウイルスが多数見付かっていて、おそらく、その中の1つがハクビシンまたはタヌキなどの動物を介して、ヒトに伝播したと見られています。

SARS-CoVの顕微鏡写真 photo by National Institute of Infectious Diseases, Japan

MERSコロナウイルス(MERS-CoV)

MERSコロナウイルス(MERS-CoV)は、2012年9月以降、アラビア半島を中心に発生している中東呼吸器症候群(MERS)の原因ウイルスです。ベータコロナウイルス属に属し、ヒトコブラクダを自然宿主とするウイルスで、ラクダでは感染しても軽症に終わりますが、くしゃみを介してヒトに伝播して重篤な肺炎を起こします。

また、ヒトからヒトへと伝染することもあり、イスラーム教徒が行うマッカ(メッカ)への大巡礼で流行したほか、2015年には韓国で医療関係者を中心にアウトブレイク(186名感染、38名死亡)が発生しました。

ただし、ヒトからヒトへの伝播は限定的で濃厚接触時に限られます。2022年5月までに2591名が感染し894名が死亡。現在も散発的な発生が見られます。致死率は約35%とかなり高く見えますが、不顕性感染者も多く、実際の致死率はもっと低いと思われます。MERS-CoVも、コウモリから近縁のコロナウイルスが多数見付かっており、コウモリからヒトコブラクダへ伝播したと考えられています。

【写真】MERSコロナウイルス(MERS-CoV)MERS-CoVの顕微鏡写真 photo by National Institute of Infectious Diseases, Japan

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