「胸を切らない心臓手術」を実践する世界一の心臓外科医が考えていること

天才医師・渡邊剛(前篇)

日本で初めてダビンチ手術を実施

「世界ではいま私にしかできない心臓手術があります。どんな困難な症例や再手術も受け入れています。いま日本で受けられる最高の手術を提供し、必ず元気になって帰っていただくことが私の手術を希望する方との約束です」

病んだ心臓を抱え手術を待つ患者にとってこれほど心強い言葉はあるまい。命の危険にさらされ、断ち切られようとしている患者の人生の糸をもう一度結び直す仕事を請け負っているのが、心臓血管外科医・渡邊剛医師。ロボットを用いた心臓外科手術・ダビンチ手術の世界的権威で、「ニューハート・ワタナベ国際病院」の病院長だ。

井の頭線浜田山駅の改札を出て徒歩5分。突き当りの井之頭通りを右折して100mほど行くと、ニューハート・ワタナベ国際病院の5階建てビルが見える。

1階受付横の通路の壁には、渡邊医師が憧れ、医師を目指したきっかけとなった手塚治虫のマンガ「ブラック・ジャック」のイラストがかかる。ちなみに5階院長室の壁際の棚にも80cm大のブラック・ジャックのフィギュアが鎮座する。

Photo by Shinya NishizakiPhoto by Shinya Nishizaki

厚さ10cm程の一枚板のテーブルの上にはクリスタルの盾が3帖並ぶ。ダビンチを開発した米国のIntuitive Surgical社が、世界で最もダビンチ手術を行ったドクターに贈る表彰盾だ。渡邊医師は2019年から3年連続世界一。世界で最も多くのダビンチ手術の経験を持つナンバーワンドクターなのである。

ダビンチを用いたロボット手術については後で詳しく述べるが、体に1cmほどの小さな穴を4つ開け、アームに付けた内視鏡ですべての操作を行う超精密鍵穴(キーホール)心臓手術だ。従来のように胸を大きく開けて肋骨を切る必要がないため術中の出血が少なく、術後の痛みも軽く、患者の負担を大幅に軽減する超低侵襲の手術である。

「お待たせしました」と入ってきた渡邊医師は、スマートで都会的なセンスを漂わせる。白衣を着ていなければエリートビジネスマンとして通りそうだ。柔和な語り口は、よくある医者の偉そうなところを感じさせない。暖かい笑顔に思わずほっとほっとさせられ、患者が安心する雰囲気をすぐに感じた。

渡邊剛医師 Photo by Shinya Nishizaki

ニューハート・ワタナベ国際病院は、心臓手術設備2ヵ所、大血管手術設備(ステントを含む)1ヵ所、冠動脈診断・治療設備1ヵ所を持つ。心臓血管外科、循環器内科を中心とする高度専門治療を行う国際病院だ。ベッド数44床(一般病棟35床、HCU高度治療室9床)で、職員約130名が患者に対応する。

 

「日本で初めてダビンチを使って心臓手術を行ったのは2005年のことです。金沢大学医学部に教授として在籍していた時でした。その後昨年末(2021年12月)までに1162件のダビンチを使った心臓手術を経験してきました。

現在、週に5件、多い時には10件、コロナの影響のなかで昨年も約200件のダビンチ手術を行っています。これだけダビンチで心臓手術をしている病院は世界でもありません」(渡邊医師)

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