ダビンチ手術の実際
ダビンチは術者が遠隔操作で手術を行うサージョンコンソールと、術野に挿入するロボットアームが装着されたサージカルカート、そしてアームに装着された内視鏡から送られてくる術野の画像からハイビジョンの3D画像を作成するビジョンカートという3つの機械から成り立っている。
ダビンチは元々1991年の湾岸戦争の時に前線で負傷した兵士の治療に外科手術のロボットの遠隔操作で治療ができないかという事で米国国防総省が研究開発していた。戦後米国のIntuitive Surgical社が外科手術のできるロボットシステムを開発、1999年に完成させたのがダビンチだ。
胸に1cmほどの穴を3つ開け、そこから3本のアームが挿入されている。そのうち2本のアームには術者が操作するメス、ハサミなど手術具が取り付けられ、他の1本には手術の部位を示す「眼」となる内視鏡が先端に付けられていて、サポート役の助手が操作し、術者に手術具などを渡すアームだ。

ダビンチの操作は、術者は全身麻酔が効いて仰向けに寝ている患者のベッドから3mほど離れたところにあるサージョンコンソールの前に患者に背を向けて座る。患者の胸には3本のアームが挿入され、術者はサージョンコントロールの二本のレバーを操って連動した手術具の装着されたロボットアームを3画像を見ながら遠隔操作していく。
「普通の内視鏡出手術は平面の2D画像ですが、ダビンチは3D画像ですから立体感がまるで違う。心臓手術は奥行き感やより正確な手術が求められるため、術野を10倍以上に拡大した3次元画像を見ながらの手術が可能です。
また、これまでの内視鏡では鉗子の動きは90度が限界でしたが、3次元では鉗子の動く範囲は360度動かすことができる。米粒に字が書けるほど細かい1mm半の血管を縫うことができるのがダビンチなんです。その結果安全で確実な手術成績を出せるようになり、ロボット手術は超低侵襲の鍵穴(キーホール)手術をやるのに最もふさわしい手術です」(渡邊医師)

手術スタッフはコンソールを操作する術者の渡邊医師と手術をサポートする助手の外科医、麻酔医、看護士、人工心肺士の6人がチーム渡邊として連携して行われる。
「私のところに来る患者さんはがん患者のグレードで言えばステージ3から4の手術をしなければ危険だというかなり症状が厳しい患者さんが多い。
それでも私の治療治癒率は99.6%。他の病院の平均は97%ですが、失敗する倍率が他の施設は3%でうちの5倍です。つまりうちは他の施設より5倍安全な手術をしている。患者さんは5倍安全な手術を受けるか、5倍危険な手術のどちらを選択しますかということです」
後篇では、渡邊医師がいかにしてトップドクターとなったか、その過程と、さらに渡邊医師の手術を最近受けた患者の驚きの証言を紹介しよう。