2020年に突然天国へ旅立ってしまった三浦春馬さん。春馬さんのボイストレーナーを7年務めた斉藤かおるさんによる書籍『春馬くんとの”未来の雑談” ~三浦春馬の勉強ノート~』が発売となった。あとがきには、2021年7月、FRaUwebに掲載されたインタビューがきっかけとなって生まれたと書かれている。
その「FRaUwebでのインタビュー」を行ったジャーナリストのなかのかおりさんが、およそ1年ぶりに「かおる先生」と生徒から呼ばれている斉藤さんと再会し、今回の書籍についてインタビューをした。
インタビュー前編では、なぜ今この一冊を綴ったのか、そこに恋愛も含まれているのはなぜなのか。率直な疑問にお答えいただく。
斉藤かおるさんのFBが「グリーフワーク」の一環に
三浦春馬さんが2020年7月に急逝して以来、春馬さんと同じ茨城県土浦市出身の筆者は、彼の作品を見ると同時に、元新聞記者として社会での現象を見つめていた。ファンの方々、また新しくファンになった方々の悲しみが、オンラインや映画館にあふれた。
一方で、温かなムーブメントも生まれた。土浦市にある映画館「土浦セントラルシネマズ」は、春馬さんを子役の頃から応援してきた。ファンのメッセージを桜の木に見立てて飾ったり、出演作の監督を招いて思い出を分かち合ったり。今も、ファンのよりどころになっている。
春馬さんの最後の主演作「天外者」の、バリアフリー上映についても取材した。東京・田端駅近くの映画館「シネマ・チュプキ・タバタ」では、様々な作品に音声や字幕をつけて上映している。天外者をきっかけに、こうした取り組みを紹介することができた。
取材を続けるうちに、斉藤かおるさんのFacebookを知った。春馬さんのボイストレーナーを7年務めた斉藤さんは春馬さんの思い出をつづり、ファンが支え合う場になっていた。筆者はこうした場も、「グリーフワーク」の一環になっているのでは、と気づいた。新聞記者時代から終末期医療の取材をしてきて、残された人たちのグリーフワークについても勉強した。否認、怒り、抑うつ等の様々な段階を経て、大切な人がいない世界を生きていく。周りの人と思い出を分かち合うことも、必要だとされる。
春馬さんとお会いしたことはないが、同じ土浦出身であること、筆者が大学時代に合唱団に属していて音楽関係の知人も多く、斉藤さんの活動に親近感があったことから、思い切って連絡した。
これまでの記事を見てもらい、何気ないやりとりを重ね、2021年6月末、初めて斉藤さんに会った。4時間近くに及ぶインタビューの中で、春馬さんがお茶を飲んだカップや、春馬さんに紹介したカメラなども見せていただいた。帰り際、かわいい教え子に会えなくて寂しいと、先生は静かに涙を流していた。
そして、2021年7月にフラウで公開した斉藤さんのインタビューには、大変な反響が寄せられた。「春馬さんが、ずっと前を向いていたエピソードを知れて嬉しい」というメッセージがほとんどだ。