「鉄道ファン」しかほぼ乗らない「JRの赤字路線」は廃止一択...高校へは自転車で通ってください
日常で使うのは車かバス
JRの赤字ローカル線に廃線危機が迫っている。
2022年4月、利用者の少ない赤字路線と赤字額を初公表したJR西日本に続き、JR東日本も公表に踏み切った。
2022年3月25日に、野村総合研究所が公開した「ローカル線沿線住民約1万人を対象とした地域公共交通に関するアンケート調査」では、75%が最寄りのローカル線を「ほぼ利用しない」と回答する一方で、52%の回答者が、ローカル線は「地域住民の心の支えになっている」と回答した。
この調査から、赤字路線は地域のシンボルになってはいるものの、実際に日常で使うのは乗用車やバスだという現実が映し出されているように見える。
私は経済誌編集部に13年間在籍して、過日お亡くなりになったJR東海の葛西敬之さんにリニア新幹線のインタビューをしたり、高輪ゲートウェイ駅開業をレポートしたり、JR九州の列車をデザインした水戸岡悦治さんにお話を伺ったものの、「鉄道の不景気な話」には不思議とこれまで触れてこなかった。
平均利用者数は62人
しかし、よくよく考えてみれば、窮乏する夕張市をルポするために取材に行ったことがあった。記事には触れなかったが、夕張駅(石勝線夕張支線)が廃止されていたことを思い出す。
赤字路線の廃止が、東京に住んでいる私にとって「日本社会の危機」として認識できていなかったのであろう。JRの赤字路線の現状とは、これから少子高齢化を本格的に迎える日本の縮図そのものだ。 赤字路線の実態はどうなっているのだろうか。
東京から一番近い赤字路線の一つ、久留里線(千葉県木更津市の木更津駅から同県君津市の上総亀山駅までを結ぶ、JR東日本の鉄道路線)へ行って、確かめてみることにした。
JR東日本が公表した資料に基づくと、路線1キロメートル当たりの1日の平均利用者数(輸送密度)は久留里線の木更津駅~久留里駅が1023人、久留里駅~上総亀山駅が62人となっている。特に、久留里線の久留里駅~上総亀山駅の年間の運賃収入は約100万円で約3億円の赤字だという。

「営業費用に対する運輸収入を示す収支率は0.6%でJR東全体でも最低水準」(日経新聞・2022年7月28日)にある。久留里駅から上総亀山駅まで運賃210円に対して、経費が3万5000円もかかっていることになる。乗客の立場としては最強コスパという言い方ができなくもないのか。