「母、80歳、認知症。
姉、47歳、ダウン症。
父、81歳、酔っ払い。
ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。46歳。独身、行き遅れ。
全員ポンコツである」

2021年9月20日に始まった連載「ポンコツ一家」の第1回冒頭で、自身の家族のことをこのように紹介したにしおかすみこさん。ダウン症の姉をケアしていた母親が認知症になったことで、にしおかさんが実家に一緒に暮らすようになったのは、コロナ禍の2020年のことだった。

それからのことを率直に綴る連載「ポンコツ一家」13回では、ちょうど連載が開始された2021年9月20日、姉が父と病院に行ったときのことをお伝えしている。普段は世話をしない父が病院に連れて行くというだけで不安になる認知症の母。しかも帰りがとても遅い……そんなときににしおかさんが思い出したのは、自身が8歳のとき、姉が帰ってこないと大騒ぎになった日のことだった。

前編「にしおかすみこ、ダウン症の姉が病院に行って帰らない…認知症の母がブチ切れた日」では、「探してくる!」と外に出ようとした8歳のにしおかさんが、母の涙にドキッとするまでをお伝えした。行方不明になった姉はどうなったのか。そして病院からの帰途で何があったのか……。

8歳のときの行方不明事件はどうなったのか…写真提供/にしおかすみこ
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8歳のときの思い出、続き。

姉は帰ってきた。
その日の夜中。親切な女性に見つけてもらったそうだ。姉のランドセルや所持品のいたるところに名前、連絡先が書いてあり、それを辿ってくださった。雪や失禁で汚れた服まで着替えさせてもらい、しもやけの手に毛糸の手袋を被せてくださっていたそうだ。ここら辺の記憶は私にはない。寝てしまっていたのだろうか。
次の日の朝。母、姉、いつの間にやら仕事から戻った父と食卓を囲み、普通を取り戻していた。普通と違うのは父が酒臭くなかったこと。

ふと目の前の皺皺のそら豆が、瞼の被る三角目を濡らし私を見つめている。「恩人だよ。お姉ちゃんが生きてるのはその人のおかげだよ。一生忘れない。改めてお礼に行かなきゃいけないねえ」と。

「行こうよ。どこ?」

「だから! ばか! 一生忘れちゃいけない人を忘れちゃったんだよ!」

……なるほど。認知症だった。