「選挙は盗まれた」「ワクチンは殺人兵器」…陰謀論が人を殺し社会をも蝕む「深刻すぎる実態」

「選挙は盗まれた」「ワクチンは殺人兵器」……なぜ多くの人が、こうした陰謀論を信じ込んでしまうのか。全米で急拡大し日本でも広がる「Qアノン」という陰謀論集団がある。

Qアノンは2017年、ひろゆき氏がオーナー兼管理人を務める匿名掲示板「4chan」の投稿から始まった。それから5年、陰謀論がきっかけとなる事件が多発している。

では、Qアノンの黒幕「Q」とはいったい何者なのか——。

その知られざる姿に迫ったルポルタージュ『Qを追う 陰謀論集団の正体』が話題になっている。著者の朝日新聞記者・藤原学思氏は、アメリカで、日本で、何を見たのか。

 

妻と娘を殺傷、自らは警官に撃たれて死亡

ある一家の話から始めたい。

父親の名は、イゴール・ラニスという。自動車業界で働く53歳。「車の街」として知られる米中西部ミシガン州デトロイトから、北西に50キロほどの距離にある郊外の町に、妻のティナや娘たち、大型犬のサミーとともに暮らしていた。

9月11日午前4時すぎ、地元の警察に連絡が入った。それはラニスの25歳の娘からで、「たったいま、父に撃たれた」という内容だった。

警察は詳しい住所などの情報を得られなかったが、発信地と思われる周辺に急行する。現場では銃声が聞こえ、音がした方へと近づいていった。

すると、ある家の正面玄関から、散弾銃を持ったラニスが出てきた。警察官に対して発砲するラニス。警察官から応戦されることになり、射殺された。

警察官の目に映ったのは、玄関からはって出ようとする娘の姿だった。通報者でもある娘は病院に運ばれ、緊急手術を受けることに。一時は重篤と判断されたが、その後、容体は安定した。

ところが、同じくラニスから撃たれた妻のティナは助からなかった。享年56。背後から複数回撃たれており、娘と同様に逃げようとした形跡が見られた。犬も何度か撃たれたようで、亡くなっていた。

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