日本の高齢者は働き者だ。
2021年内閣府が公表した高齢社会白書による高齢者の就業率は、60~64歳が71.0%、65~69歳が49.6%と、10年前に比べ10ポイント以上も増えている。
比べてフランスの高齢者は、年金との兼ね合いもあるが、早期にリタイアを望む割合が大きい。
平成17年度 第6回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果で、現在仕事を持つ高齢者に「今後も収入を得る仕事をしたいか」という問いに、「はい」と答えたフランス人の割合は42.9%。 87.5%の日本人の半分以下である。
定年後も働き続けたい日本の高齢者に対し、早期引退文化が特徴づけられるフランス。年金制度の充実など、背景が異なるにしても、就労したくない理由のトップが、「仕事以外にしたいことがあるため(42.4%)」である。自分の人生や生活を優先したいフランス人気質がうかがわれる。

前編「世界観光都市力1位パリがSDGs達成度ランキングでも10位→4位に急伸した理由」では、2017年世界SDGs達成度ランキング10位から、たった2年で4位へと躍進したパリにおけるサステナブルな取り組みをお伝えした。
地産地消のローカルプロダクツや地元のアーティストを応援するレストランやショップ、築数百年の歴史的建造物のルーツに敬意を払いながら、現代に合わせて蘇らせるパリの街。あるべき規範より個々の価値観を尊重しているように感じた。

 

パリ在住のエッセイストの猫沢エミさんが、市内の靴屋での出来事をこんな風に綴っていた。
「閉店30分前に来店したんです。私しか客がいなくて、女性の店員さんがそわそわしていて。試着していたら、「ちょっと頼みがある」と切り出されたんですね。「私、シングルマザーで保育園に子どもを預けているんだけど、早く店を閉めて迎えに行こうと思っていたの」と。個人店でもないお店でしたし、おそらく店主でもないのに、そんな権限あるんだ、と思ったんですが(笑)。
「今日どうしても買わないといけない理由がないなら明日にしてくれない?」と。それを聞いてもっともな理由だなと、人間らしくていいなと思ったんです」(『パリマグ』2021年9月24日より)
「あ、いいよ、そんなこと」って許し合えたら、もっと楽な社会になる。猫沢さんはそう感じたという。
高齢者もワーキングマザーも人間臭さを感じさせるパリの街を探索してみた。