資本主義の毒を飲むしか、私たちを貧困から救う道はないのか?

不確かな未来に賭けるより、資本主義を倒せ
ヤニス・バルファキス プロフィール

企業は天才たちを「人間を壊す道具」に変えた

イヴァは動じなかった。「コスタの言うその資本主義者のテクノストラクチャーは、なぜみずからの優れた功績を否定するの? 彼らは中国を経済大国に変えた。おおぜいのインド人科学技術者たちの明晰な頭脳をうまく活用した。アフリカ諸国の食糧不足を解消し、銀行口座を持てない人たちが、スマートフォンを使って送金や受け取りができるようにした。明らかな失敗もあったにしろ、株の取引を禁止してそれらの功績を台なしにすることは、本当に正しいことなの?」

議論の行き詰まりに気づいて、コスタが口を挟んだ。やはり、ふたりはより大きな全体像を見逃しているようだ。

「企業はあらゆる手立てを使って天才を雇用する。科学技術者、設計者、金融エンジニア、エコノミスト、さらにはアーティストまで。何度もこの目で見てきたよ」コスタが続ける。

 

「だけど、企業はその天才たちを使ってなにをしてきたか。彼らの才能と創造力を、人間を破壊するために使ってきたんだ。創造的である時でさえ、イヴァ、資本主義は搾取と無関係ではない。株主利益を追求するために、企業はそれらの天才たちに、人間と地球の価値あるものを─地球内部に眠る鉱物から海の生物まで─、それこそ最後の一片にいたるまで搾取させてきた。優れた頭脳は、地球資源の略奪を認めるよう政府を丸め込むために使われた。そして、そのために新たに市場をつくり出した。二酸化炭素や環境汚染物質の排出取引市場だ。彼らの雇用主が牛耳っているインチキ市場だよ!

東インド会社と違って、テクノストラクチャーに自前の私兵は必要ない。彼らは僕たちの国とその軍隊を所有している。なぜか。それは、彼らが僕たちの思考をコントロールしているからだ。業界が汚ければ汚いほど、彼らは巨額のカネを手にし、さらに忌み嫌われる。業界の権力者たちは債務で生み出した莫大な資金を投じて、ますます影響力を買い、反対派を黙らせてきた。かつて彼らは新聞社を買収して、テレビ局をつくった。いまじゃロビイストの大群を雇い、シンクタンクを設立して、トロールを雇ってインターネットに虚偽の情報を撒き散らしている。もちろん、人類滅亡の推進者である政治家に、巨額の選挙資金をぶち込んでるよ」