佐藤さとる×村上勉
「戦争の前も後も、僕らはずっと悪ガキだった」
『わんぱく天国』復刊記念対談


佐藤 「夏休みの宿題持って来い」って学校ごっこしたりしてね。木陰に筵敷いて。親のいうことなんて聞かないけど、年上のがき大将のいうことは聞いたね(笑)。
村上 うちのあたりのがき大将は成績もスポーツもなんでもすごいの。書道も音楽もなんでもすごい。ただ、そんな男たちから先に戦争に行っちゃったんだよね。
佐藤 国民皆兵だったからね。優秀なやつがたくさん死んでいった。ぼくみたいに病気で残ったのが得しちゃった。
コロボックルは戦争でないことを書いた
佐藤 コロボックル物語の『だれも知らない小さな国』も戦争をはさんだ物語だけど、戦争でないことを書いたの。これを読んだ子は戦争をしたいなんて思わないでしょう? 童話作家としては、戦記物などよりも、反対のことを書いていこうと。心を耕して、種を蒔いて、よい心が根付く。よい心を養うのがファンタジーだからね。
村上 絵に関しては、佐藤さんからファンタジーを徹底して教えられたね。ファンタジーこそ、土台がしっかりしていないとダメ。鉛筆が机から落ちて、動き出すところをしっかり書きださないとファンタジーにはならないから。
佐藤 実際には『わんぱく天国』はファンタジーでもあるんだよ。詳しくは言わないけど、書いたのは少年たちの夢なのよ。
結局ファンタジーはリアリズムの延長にあるからね――いやあ、ぼくはいい相棒に恵まれたなあ!
<了>
イラスト/村上勉 撮影/杉山和行 構成/編集部
講談社「IN★POCEKT」8月号より
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佐藤さとる・著 村上勉・絵
『わんぱく天国』
戦争の前だって後だって、子どもたちは全力で遊んでた。
<「コロボックル物語」シリーズの著者のもうひとつの代表作>
戦争の影がせまる昭和10年代、横須賀
にある塚山公園は、最高の遊び場だった。違う地域に住む少年たちは公園をめぐり敵対していたが、めんこ対決を機に仲よくなり、一銭飛行機、しかも「ヒトの乗れる一銭飛行機」を作り始める!子どもの遊びが絵と文で甦り、戦争の真実を語る自伝的名作。解説 中島京子
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